「羊をめぐる冒険」の翻訳(100)
7 限定された執拗な考え方について(1)六時になると彼女はきちんと服を着て、浴室の鏡で髪をとかし、体にスプレイ式のオーデコロンをかけ、歯を磨いた。そのあいだ僕はソファーに座って、「シャーロック?ホームズの事件薄」を読んでいた。その話は「私の友人ワトスンの考えは、せまい限定された範囲のものではあるが、きわめて執拗なところがある」という文章で始まっていた。なかなか素敵な出だしだった。
「今夜は遅くなるなら、先に寝ていてね」と彼女は言った。
「仕事?」
「そう。本当はお休みのはずだったんだけど、仕方がないわね。明日からずっと休むことにしたから繰り上げになっちゃったの」
彼女が出ていってしまってから、しばらくすると一度ドアが開いた。
「ねえ、旅行のあいだ猫のことはどうするの?」と彼女が言った。
「そう言えばすっかり忘れてたな。でも、なんとか手配してみるよ」
そしてドアが閉まった。
僕は冷蔵庫からミルクとチーズ?スティックを出して猫に与えた。猫は食べにくそうにチーズを食べた。すっかり歯が弱っているのだ。
冷蔵庫の中には僕が食べられそうなものは何もなかったので、仕方なくテレビのニューズを見ながらビールを飲んだ。ニュースらしいニュースのない日曜日だった。こういう日の夕方のニュースには大抵動物園の風景が出てくる。キリンと象とパンダをひととおり見てしまうと僕はテレビのスイッチを切り、電話のダイヤルをまわした。
「猫のことなんてです」と僕は男に言った。
「猫?」
「猫を伺ってるんですよ」
「それで?」
「誰かに預かってもらえないと旅行に出られない」
「ペット?ホテルならそのへんに幾らでもあるだろう」
「年取って弱ってるんですよ。一ヵ月も檻の中に入れておいたら死んでしまいますよ」
爪がコツコツと机を叩く音が聞こえた。「それで?」
「お宅で預かってほしいんですよ。お宅なら庭も広いし、猫一匹預かるくらいの余裕はあるでしょう?」
「無理だな。先生は猫が嫌いだし、庭で鳥寄せをしてるんだ。猫が来ると鳥が寄りつかなくなる」
「先生は意識がないし、それに鳥を獲るほど気の利いた猫じゃないんです」
爪がまた何度か机を叩き、そして止んだ。「いいだろう。猫は明日の朝の十時に運転手に取りにやらせるよ」
到六点钟后她穿着整齐的衣服,对着浴室的镜子梳头,向身上喷花露水,还刷了牙。这时我坐在沙发上读《推理小说主人公事件薄》。 “我的朋友的思考方法,是被限定在窄小范围内的,又是极其偏执的地方”。那小说以此当做开始,那真是很漂亮的开端。
“今天晚上要很晚才回来,你先睡觉吧。”她说。
“还有工作吗?”
“是的。本应该是休息的,但是没有办法。因为从明天要休长假,要提前做好。”
她出门之后过了一会儿,门又被打开。
“那个,在旅行的时候,猫怎么处置呢?”她说。
“你这么一说我给全忘了。可是怎么也得安排一下。
然后门关上了。
我从冰箱拿出牛奶和干酪送给猫。猫有点厌食似的吃了干酪。它的牙已全部老了。
在冰箱中没有我能吃的东西,实在没有办法只能边看电视新闻边喝啤酒。在星期日像是没有新闻的新闻。在这样日子傍晚的新闻之中大都是播放动物园的风景。把长胫鹿、大象和熊猫看完之后我把电视机关了,拨起了电话机的号码盘。
“猫可怎么办呢?”我对那男的说。
“猫?”
“我在养着猫。”
“那么,”
“若没有谁能给保管的话是不能出门旅行的。”
“宠物宾馆怎么样?在那里有好几家呢。”
“它年龄已经很老身体也很弱了。若把它放在笼子里一个月话就会死掉的。”
能听到猫爪敲挠桌子的咔吱咔吱声。“是这样吗?”
“希望能在你的大宅里保管。你的大宅院子很宽大,养一只猫绰绰有余。”
“真是无理取闹。先生讨厌猫,现在还在院子里招引鸟叫。若猫来了就不能招引鸟叫了。”
“先生已经没有意识了,而且这猫也已经不是能捕捉鸟的猫了。”
猫爪又敲挠了几次桌子后停止了。“那就这样吧,明天早上十点我让司机取过来。”
家中养动物宠物是需要责任的。
我们自己养动物宠物吗?同样需要责任。